研究レポート

「KINNIXの運動パフォーマンスおよび筋肉痛に及ぼす効果に関するダブルブラインド・クロスオーバー試験」
龍谷大学経営学部(スポーツサイエンスコース)
教授 長谷川裕

目的

本研究の目的は、持続的な高強度の反復運動を開始する前のKINNIX摂取が、スピード、アジリティー、ジャンプなどのパフォーマンスおよび、その運動によって引き起こされる筋肉痛の程度に及ぼす効果について実験的に検討することであった。

方法

日常的にスポーツ活動を実施している大学生29名を無作為に2つのグループに分け、一方のグループにはKINNIX、もう一方のグループにはプラセボ(砂糖入りウーロン茶)を各200ml、運動実施の15分前に飲ませ、連続10回のリバウンドジャンプ、アジリティーテスト、10mスプリントを体育館内で順番に30秒ごとに行なわせ、これを1セットとして、1分30秒サイクルで20セット、合計30分間継続させた。 リバウンドジャンプは、フィットロ・アジリティー(フィットロニック社)を用い、接地時間(ミリ秒)、跳躍高(cm)、リバウンドジャンプ指数(跳躍高/接地時間)を計測し10回のジャンプのうちベスト3の記録の平均値を記録した。アジリティーテストは、スタートラインからら右側5メートルの距離に引かれたラインまでサイドステップしそのラインを右手でタッチ、次にそこから10m左の位置に引かれたラインまでサイドステップしてラインをタッチし、再び中央ラインまで右側サイドステップで戻るという運動を行なわせスタートからゴールまでのタイムをスタートラインに置いたレースタイムII 光電管(マイクロゲイト社)によって100分の1秒単位でタイムを計測した。10mスプリントはスタートラインとゴールラインにスピードトラップ光電管(ブラウアー社)を置き、スタンディングスタートで走らせ100分の1秒単位でタイムを計測した。 1週間後に、KINNIX群とプラセボ群を入れ替えて(クロスオーバー)再び同様のテストを同じ時間帯の同じ場所で実施した。被験者はもちろん、各運動の測定者にも、どの被験者がどちらの群に属するかは一切知らせなかった(ダブルブラインド)。運動実施後の1日目から5日目までの午前中に感じる筋肉痛の程度を、大腿前面、大腿後面、大腿内側、下腿後面(ふくらはぎ)の4部位について、10段階の主観的筋肉痛評価スケールを用いて調査した。

結果

測定されたリバウンドジャンプの接地時間、跳躍高、リバウンドジャンプ指数、アジリティータイム、10mスプリントタイムの1回目から20回目のすべての測定値は徐々に低下する傾向が見られた。KINNIX群とプラセボ群の間の平均値には、いずれの試行回数目においても有意な差は認められなかった。筋肉痛は1日目に最高値を示し徐々に低下する傾向にあったが、大腿内側と下腿後面の、2日目と3日目にKINNIX群がプラセボ群よりも有意に低い値を示した。

考察

運動開始直前のKINNIX摂取は本研究で用いた運動の30分間の連続実施においてスピード、アジリティー、リバウンドジャンプのいずれの運動パフォーマンスを低下させることはなかった。また逆にそれらを増強させることもない事が明らかとなった。このことは運動前にKINNIXを摂取した場合、運動パフォーマンスの発揮そのものに対しては自然な身体的状態を維持し、高強度運動のピーク値を高める効果や、その持続性を高めるような効果が存在しないことを意味する。すなわち、本研究で見る限りにおいてドーピング的要素は見当たらないといえる。 しかし、運動実施の翌日以後の遅発性筋肉痛においては、明らかにKINNIX摂取群は早期に低減することがしめされた。特に本研究で用いた運動のうち、普段あまり行なわないサイドステップとリバウンドジャンプの主動筋であると考えられる大腿部内転筋と下腿後面の筋に有意な差が見られたことから、KINNIXによる筋肉痛の早期低減作用が存在する可能性が高いといえる。遅発的筋肉痛は、主としてエクセントリック筋活動の結果である事が知られている。運動実施の翌日の筋肉痛は両群とも同程度であったにもかかわらず、2日目と3日目において、サイドステップとリバウンドジャンプにおけるエクセントリック筋活動が引き起こす遅発性筋肉痛に対してKINNIXの効果が示されたことは、パフォーマンスにおいて有意な差がないにもかかわらず、筋の損傷の程度がKINNIX摂取群において小さかったことが考えられる。このことは、同じ運動パフォーマンスを示しながら筋の損傷を低く抑制できることになり、運動中の筋痙攣や肉離れなどの発生確率も低くなる可能性があるといえよう。しかし、KINNIXが運動パフォーマンスや筋の運動中の生理的環境にどのように作用するかについて、実際のメカニズムが明確でない以上、あくまでこれは推測に過ぎない。KINNIXの効果をさらに明らかにするためには、生化学的研究や被験者数を増やした統計的研究がさらに必要であるといえる。



長谷川 裕氏

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